ネテモサメテモ。

同人置き場

アジーム捏造

やがて晴天へ

「果実はほとんどのものに、種があるんだ」 その人は葡萄を一粒摘み、皮を剥いていく。小粒だが、中からいくつかの細かな種が出てきた。 「旦那様もカリム様も、以前喉を詰まらせたことがあってね。一粒の種だって許されない。私たちの仕事は、そういうもの…

花は摘まれた

「ジャミル!」 ころころとした鈴音のような声が、名を呼ぶ。ふわりとした銀白の長い髪を揺らし、声の主は可愛らしく笑う。走った勢いで膝辺りにきゅっと抱きつかれて、ジャミルは視線を合わせるために背を屈めた。「走っては危ないですよ」「えへへ、ごめん…

密やかなる

年末の恒例行事になったのは、たしか十年以上前か。あの頃は、参加することもましてや仕事を任されることもなかった。子供は子供らしくと、チャイルドルームに押し込まれて、ただ子供らしい遊びをするだけ。大人達の世界に入ることもない。 黒のスーツを着込…

雷雨

空を見上げると、鼻先にぽつりと雨粒が落ちてきた。小さな雨粒はやがて大きな雫と変わり、慌てて手を引く。中庭から屋根のあるベランダまで走りきると、雨音は激しさを増し、大きな飴玉が落下しているような音に聞こえた。カリム自身や、服が濡れていないか…

なんてやさしい食卓

主人の食事を終えてからの使用人の仕事は多い。 銀の食器を片付けて、残された食材はすべて廃棄。家畜の餌にもならない。前日に誰かが毒に当たった、となると翌日に残され廃棄されるものは多い。 今晩のカリムは、一口食べただけで、そのほとんどを残してし…